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造船技術

用語解説

あ行
【一般配置図】
  • 重要なのは、この一般配置図の段階で、構造の方針も決めてしまうということです。船の骨組みであるフレームと諸設備の配置とは密接に絡んでくるので、一般配置図を描くのにも構造力学の知識が必須です。
か行
【切り合せ・リベット接合】
  • 鐃鉄工によって曲げ加工されたパーツは組立工によって組み立てられます。外板はおのおのが最大30mm重なるようにつくられていて、組み立ててからラップしている部分を、溶接代を取りながらアセチレンガスで切断する。この作業を切り合せという。現在の造船工法では、その後溶接の工程になるが、1957~58年ごろまでは、リベットで外板同士を接合していました。リベット接合の場合、外板は切り合せをしません。どうしてリベット接合から溶接に工法が変わっていったかというと、リベット接合のほうが溶接より格段に手間がかかるので、建造日数がより多くかかり、また鉄を扱う技術が進歩し溶接の信頼性が増したことも理由です。もっとも軍艦などでは、溶接の場合モノリシックな構造なので、砲弾が当たると溶接のつなぎ目を超えて亀裂が進みますが、リベット接合の場合、部分的に壊れ、亀裂が進行しないのでリベット工法のほうがよいといわれていました。
【鐃鉄(ぎょうてつ)】
  • 鉄を曲げるだけの仕事を鐃鉄(ぎょうてつ)といいます。鉄を曲げるのは叩くか、加熱するかのどちらかです。叩き曲げの場合てっぽうといって削岩機の先に丸い鉄球をつけたようなもので叩いていく、鉄の性質は、叩いた力が鉄板の裏まで行く場合は叩いたほうに曲がるが、力が板厚の途中までしかいかないと叩いた反対側に曲がります。
    戦前の造船はこの叩き曲げの方法でつくっていました。曲げやすくするために鉄板を加熱してから叩きます。戦艦大和などもこうやってつくりました。しかしこの方法は、ものすごく騒音がします。
    戦後は叩き曲げから火づくりに変わります。これは叩く代わりに加熱するだけで曲げる方法です。やり方は右手にアセチレンバーナーをもち、左手でホースを持ち、水をかけながら鉄板をあぶっていく。鉄板は最初外側に曲がっていくが、バーナーを離して水をかけつづけていると、自分のほうに曲がってくる。(※テレビ放映・記事に動画あり)
    叩き曲げから火づくりに変わったのは、戦後鉄板の性能が上がったことが理由です。つまり、鉄板中の炭素の含有量が均質になることにより、鉄がやわらかくて素直になりました。戦前の不均質な鉄では、火であぶってどのように曲がるかわからないので、叩き曲げしかできなかったのです。
    火づくりで鉄板を曲げるテクニックとして、曲がりが緩い曲面の場合は線状焼といって平行線状に加熱して曲げます。もっと強い曲がりの場合は、線状焼した上に別の角度で線状焼するクロス線状焼にします。さらに曲げたいときは、餃子の皮を絞るように耳を絞っていきます、これを三角焼とか耳絞りといいます。また部分的に曲げを調節するときにはお灸を据えるように点焼をします。
【現寸】
  • 設計図をもとに、実際の大きさで線を引いていくのが現寸の工程です。
    ここでは、現寸の線はポスターカラーで描きます。線の種類により色を変えるので3色ぐらい用意します。
    船の外形を決めるラインを、線(ライン)図から寸法を拾い、ミリ単位の精度で現寸に起こします。このラインの描き方は、線図を描くときと同じく、バッテンを使います。バッテンは今では塩ビパイプを使っていますが、以前は桐の芯の部分で作った角材でした。
    このラインも、線図のときと同様、釘を一カ所はずしてバッテンが動いたら、スムーズに力が流れている線ではないので、最適なラインになるまで修正していきます。このラインの修正作業をフェアリングといいます。
    ラインが決まったら、墨刺(すみざし)で線を引きます。この墨刺は大工さんの使うものと、先端の削り面が逆になっています。というのは、大工さんは、指曲(さしがね)に墨刺の削り面を当てて線を引きますが、造船の場合は、バッテンに平らの部分をつけて線を引きます。
    床に引いたラインは透明なフィルムに移し、このフィルムの線を鉄板に罫書いて船の骨組みであるフレームができます。
    船の外皮である外板の一枚一枚は、非球面の曲面です。
    これを平面に直していくのが、現寸の工程の中で一番重要な”展開”という作業です。
    展開の方法には、真金(まがね)法とか、タスキ法とかいろいろな図法があります。これらは、曲がりの性質によって使い分けます。
    外板も一枚一枚、床からフィルムに移して、鉄板に罫書きます。ここまでの工程は、現寸工の仕事です。木型も現寸工がつくります。
【構造図、外板展開図】
  • その後、各部分の構造図を描いていきます。構造図というのは、建築の構造詳細図に当たるもので、船首、船尾、舵、そしてフレームごとに描きます。この構造図には、設備や電気の配管が絡んできます。それと、外板展開図というものを描きます。これは外板の部材のつなぎ目を決めるための概略図です。
【曲面・曲線(造船の分野での解説)】
  • 直線と曲線で示される幾何学図法により、空間図形がすべて実長で平面に完全展開することができる曲面を可展開曲面と定義し、これを二次元曲面と呼んでおります。蓮池濠手洗所のアルミ屋根面がこれにあてはまります。(その他に円筒形、円錐形、多面体形なども同様です)

    三次元曲面:
    幾何学図法による完全展開が不可能な曲面は、非展開曲面と定義している。この面内には絞りと延びが存在する。この面内応力を均一化させるため造船鐃鉄法(ぎょうてつほう)による曲面形成を行なう。
    このような場合に展開は近似展開法を利用するしか方法がない。
    このような場合の曲面を三次元曲面と呼んでいます。
    蓮池濠手洗所のRC躯体からの滑らかな屋根面の部分のふくらみは三次元曲面である。たとえば、人間であればお尻、魚であれば鮪、食べ物であれば長瓜など。

    生きている曲線:
    曲線においても二次曲線、三次曲線の定義がある。これらの集合の積分がそれぞれ二次、三次の曲面を構成している。二次曲線は、曲率半径(大きさ)と曲率中心の動きが流れるように連続的に変化する。
    二次曲線の延長線上において、ベクトル方向では、曲率半径が無限大となる。
    このような曲線が連続する線を三次曲線と呼んでいます。三次曲線は、屈曲点を任意に変化させることにより、二次曲線のように収束することがなく、無限大に連続するので生きている曲線と解釈することができる。
さ行
【次元】
  • 空間座標でX、Y、Z軸で示される空間図形を三次元形状と定義している。自然界に存在する生物はすべて三次元形状を呈している。これに時間の経過が加わると四次元となり、歴史が加わる。
    人間の視覚を人に伝達する方法の一つとして、特にもの造りの場合は、二次元で表わすことが多い。
    これが二次元図面(設計図)である。船では、三次元船体形状を立体空間であると認識してその空間を格子枠を基準にした形状を定量化し、三次元を二次元に変換して図面を作成している。
【船殻と艤装】
  • 船の骨組みと外板からなるストラクチャーを船殻(せんこく)、その中に配する諸設備を艤装(ぎそう)といいます。艤装には機関(エンジン)、電気、配管、木工、鉄工、無線などがあり、それぞれ機関艤装、電気艤装などと呼びます。配管艤装には油圧、燃油、オイルといった油の配管と、清水と海水の水の配管があります。木工艤装や鉄工艤装というのは、建築でいう家具にあたるテーブルやベッドなどを含むもので、船の場合、サイズ的にも強度的にも、既製品は入らずに、すべて造船所でつくってつくりつけます。また造船所には、船殻だけ、あるいは艤装だけつくる造船所というものはありません。
【線図(ライン図)】
  • 殻設計には、構造力学と流体力学の両方が関係します。このため大学では船舶工学科の大学院レベルの知識が必要です。また、船殻設計を始めるためには、一般配置図が全部決まっている必要があります。船殻設計の基本になるのが”線図(ライン図)”で船の外板を基準面の断面線で表したものです。
    ラインの良し悪しで、船の走りは大きく左右されます。ラインで重要なのは船首の喫水線の水切角度です。
    港で走っている船を実際に何隻か見ていると、どういうラインが良いか悪いかわかるようになります。
    アメリカズカップに出るヨットなどは、何度も模型をつくり、試験水槽で実験を繰り返すので、この線図のデータ1枚をつくるのに3~5千万円かかります。
    線図のラインに限らず、造船の曲線は円弧や楕円は用いません。また、雲形定規も使いません。
    線図のラインはバッテン(Batten)というプラスチックの棒を、基準点に合わせて魚形文鎮で押さえながらラインを決めていきます。
    この作業のポイントは、ラインの途中の魚形文鎮を一カ所バッテンから離したとき、バッテンが動いたら、そのラインはだめで、動かなければOKということです。バッテンが動くということは、そのラインに沿ってスムーズに力が流れていないことにほかなりません。
    線図のラインを描き終わったら、ラインと基準線との交点の寸法を三角スケールで読み、これを寸法表(Off-set Table)に書き込んでいきます。ここでは、寸法をシビアに読む感覚が重要です。寸法はミリ単位で読んでいきますが、朝と夜とでは紙の伸び縮みによって、寸法が変わってくるので、湿度が一定の条件下で読むように気を使ったものでした。
た行
【中央断面図,鋼材構造図,排水量曲線図】
  • 最初に検討するのは、船の中央部の断面図です。船にかかる外力は、中央部で最大になり、よって外板の厚さは中央部が一番厚く、前後は徐々に薄くしていきます。計算のプロセスは、まず外板の厚さを決めます。構造的には、外板とデッキのモノコックの外殻構造というのが基本で、骨組みは後から外板をどう保持するかという観点から補強として入れていきます。外洋漁船の場合、外板の厚さは12~16mm、デッキは5~6mm程度です。
    中央断面図に続き、鋼材構造図、排水量曲線図をつくります。
    中央断面図、鋼材構造図、排水量曲線図には、それぞれ計算書をつけます。これらの計算には2~3ヶ月かかります。
    これに、一般配置図と線図を加えた一式が建築でいうところの基本設計図となります。
や行
【溶接】
  • 造船の溶接は、外板どうしは完全溶込溶接、外板とフレームなどその他の部分はすみ肉溶接です。これは、船の強度は外板の外殻構造で保持するという設計方針によります。
    造船と建築の溶接の技術的な違いがあるかというと、まず鉄の溶接については建築でも使う溶接構造用鋼材であるSM材は、そもそもスチール・マリン材の略称ですのでまったく同じと考えてください。溶接機などの道具も同じものです。違いとしては、完全溶込溶接の場合、陸の工事では裏当て材を使いますが、造船では使いません。裏当て材などなくても溶接はできます。
    また、造船では溶接した後に火と水を使ってひずみ取りをしますが、陸ではしません。本来なら柱と梁を溶接した場合でも、そのままでは変な内部応力が残っていてひずみ取りをする必要があるはずなのですが、それはしません。この違いがどうしてなのかわからなかったのですが、溶接工の賃金体系に原因があるのではと思い当たりました。陸の溶接工の賃金は溶接長さ1mあたりいくらという計算で算出します。この単価はわれわれ造船屋が考える半分の金額、いい換えれば造船における溶接工の倍以上のスピードで溶接をしなければペイしない単価でした。そのためには溶接の電流を上げて、ただ鉄を溶かしていくという溶接になります。造船の場合、鉄が溶けるぎりぎりまで、入力熱量を押さえてひずみを少なくするということが重要です。必然的に溶接のスピードはゆっくりになります。
    溶接の検査についても、陸では超音波検査をしますが、これはいわば聴診器を当てているようなもので、大きな欠陥についてはわかりますが、キズや欠陥が内部でどう走っているかはわかりません。造船では、全溶接部分にレントゲンを当てて検査します。これで細かいピンホールまでチェックします。
    陸の溶接工は、上向きの溶接は難しいとよくいいますが、われわれにいわせると単に能率だけの問題で、普通の溶接の半分しかはかどらないというだけのことです。
    もっとも、柱と梁の接合部における溶接後のひずみ取りをしないことについては、溶接の長さが短いために、全体として問題にならないからなのかと、陸の仕事をするようになって思うようになりました。